320億光年彼方の幻夢郷

思ったこと、感じたことをのんびり書きます

扉の向こう

灰色の惰眠、覚めて横たわり

部屋の黄ばむ壁が世界の果て

暗い辺境、沈黙の荒野

ただ小さな扉が一つ

横たわって、ただそのままに

おもむろに扉を開ける

いつでも扉は啓けている

その扉の向こう、その彼方彼岸の

けばけばしい海原の

色彩と音色、ほとんど無限の

感情と欲望、ほとんど無限の

値札と広告、ほとんど無限の

文字の洪水

写真の氾濫

映像の荒海

九割九分は意味もなく

九割九分は価値もなく

わたしはただ一つの

小さじに乗る程の玉石の

その一分に届かない

 

あばら家から富豪の宮殿を眺め

ただ黄ばんだ壁にもたれて

みなぎる貴族たちの絢爛を見る

物乞いは僭主に集り

札束の鞭を欲する

着飾る案山子は虚ろに微笑む

幾千の奴隷がその笑みに沸く

北風に倒れてようやく

それが案山子と分かるまで

暗い阿片窟、死人が抱き合う

傷に触れ慰め合いながら

傷に触れ居場所を奪い合う

不幸が競りにかけられる

何の意味があるのか

何の甲斐があるのか

 

ただ小さな扉が一つ

横たわって、ただそのままに

扉を閉じる