320億光年彼方の幻夢郷

思ったこと、感じたことをのんびり書きます

夜は静かに

太陽の没落、それは母の死

秋の夕暮れ、乾いた風が夜を運ぶ

暗闇が降り、海と地を冷たく濡らす

天蓋、真黒な幕を下ろして

空、独りぼっちの孤児が泣く

叢雲のハンカチーフを拭って

ザアザアサワサワキュウキュウと

合わせて、虫が夜に泣く

サワサワ、風は光無い街を愛撫して

すすき揺らす、冷たい風また吹けば

夜が孕む禁忌の孤児

陽射しのゆりかごを抜け出し、毎夜ただ独り泣く

どうか気付くな、気が触れるから

夜に皆が寝静まるのは、それが解るから

深い夜、天蓋を蒼く薄く照らす

顔が欠けた孤児が言うには

現し世に蓋をする鱗雲の隙間

果てなく続く天の高さほどに

あまねく人は皆孤独と

夜になれば皆解ると

死の間際にも皆解ると

独りぼっちで人は死ぬと

人と人とはかくも隔たれて

寄り添いあってもなお孤独

隣り合い触れ合っても、きっとそれが解るから

だのにそれゆえか人は欲する

塩の水を飲むが如く欲する

欲して傷つき、握りしめて死ぬ

人は皮膚の蓋に閉じ込められ

心は頭蓋の檻に閉じ込められ

一人として共に死ぬる者はない

夜は静かに寝静まるが良い

ひとたび気付けば、気が触れるから